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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.2 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

「そもそも居心地の良さって何だろう? 住まいに何を求めよう?」

(株)アーキネット代表 織山 和久

(ア) 居心地はひとそれぞれ。気張らずに暮らす

 朝の通勤電車では奥のドア脇、あのレストランなら眺めが良く静かな窓際、会議室では左側に仲間の並ぶ席、初夏の公園は木陰で、などなど。このように、わたしたちはどんな場面でも「居心地のいい場所」を見つけて占有します。猫でも、日当たりが良くて外敵も見える窓際がお気に入りのように、生き物としての習いなのでしょう。住まいとは、雨露をしのぐところから始まって、さまざまな居心地の良さをまとめ上げた空間です。
 そこで、ご自分にとって「居心地がいい」と感じる暮らしの場面を、素直に思い浮かべてみましょう。伺ったことのある例ですが
 「日が暮れる様子を眺めながら、ずっとボーっとしているのが安らぐ」
 「ほの暗くて静かな場所、そう、押入れのようなところで本を読むのが落ち着く」

敷地内のケヤキの大木を、リビング、ダイニング、キッチンが囲むように配置され、時のうつろいや風のざわめきなどを感じて過ごすプラン。いろいろな角度から樹木を眺める多方向の開口部、天高いっぱいのサッシ、ガラスで仕切ったキッチンなどの建築的な工夫がポイント

 「子供が遊びに熱中したり寝息を立てたり、という気配を感じると、なんだか暖かい気持ちになる」
 「炊きたての筍ご飯をほおばる、そんなみんなの顔を見るのがうれしい」
 「外のケヤキを眺めながら書き物をして、気分転換には買い物がてら、ふらっと散歩するのがいい」
 このように環境や相手との関係、個人的な記憶や好みなどによって、それぞれの居心地の良さがあります。
 ところが一般的な○LDKのプランは「家は妻の城、夫は寝るだけ」で、「夫は会社に尽くし、妻は家族に尽くす」暮らしには居心地いいのかもしれませんが、皆が本当にそうなのでしょうか? 衣食住のうち、着心地や食べ心地は、自分で選んだり作ったりするのが当たり前です。それなのに、住生活では、自分に住まいを合わせるのではなく、窮屈そうに住まいに自分を合わせる、というのはあまりに不幸なことです。
 合わない住まいでストレスを解消できなければ、心身の調子も狂ってきます。在宅時間は一生の約半分、安い投資ではないのだから、せっかくの住まいを自分たちなりの居心地の良い場所にしない手はありません。

(イ) 持ち味の異なる場所を組み合わせる

 一日の中でも、同じ人でも、そのときどきや気分によって居心地のいい場面が変わっていきます。朝日を背ににぎやかに朝食をとる、帰宅の気配を察して子供がとびかかる、バターの焦げる香りを感じる、風呂上りに涼む、爪を切りつつ日向ぼっこする、草木に水遣りついでにお散歩する、来客と歓談する、静かに読書に集中する、といったような場面場面です。こうした場面に応じて、わたしたちは少しでも居心地の良い場所を求めます。
 ヴェルサイユ宮殿のように部屋数が700あれば、こうした場面場面にふさわしいしつらえを施すのも可能です。でも普通はそうはいくはずはありません。解決の方法としては、大きめの空間があって、その中に角や端などの場所や内外・方角といった向きによって持ち味の異なる場所が生まれる、というのが基本になります。一人二役・一人三役というのでしょうか、例えば、二層分の天井高があって、昼間は明るくおおらかなリビングだが、夜は照明を落として深深とした山小屋の雰囲気になる。キッチンの奥や裏の間でひとりにもなれる。ダイニングには特大のテーブルを置き、仕事の書類を広げたり、子供の勉強を見るのにも使う。といった具合です。
 そして性質の異なる空間がいくつかあると、居心地のバリエーションはさらに増えます。天井高がある明るい空間/陰影があって穏やかな空間、からっと乾いた空間/しっとりした空間、あけっぴろげの空間/集中できる空間、外の気配を感じる空間/密やかな空間、といった組み合わせになります。廊下や階段、玄関、テラス、といった間と間を移動する場所も、気分転換に効いてきます。このように場面場面の居心地の良さを大事にする観点からすると、南北に長いフラットで窓はもっぱら南向き、部屋数をとるので細切れ、というプランは使い方も限定されて物足りません。南側リビングも、日中はまぶしくてカーテンは閉め切り、開放感は失せる。中住戸なら東や西に窓もないので、時刻によって日の当たる場所があまり変わることもない。静穏に過ごすはずの北側個室は、外廊下から足音も聞こえて落ち着かない。その上に、どこも天井高は同じなので、全体としてはのっぺりとニュアンスの乏しい退屈な空間になりがちです。

主寝室とLDKとが中庭を囲むプラン。LDKの上には子供室があり、LDKから家族の気配を感じながら、ほどよい距離感のとれるプラン。中庭には光が注ぎ、そよ風が流れ、部屋内を心地よくしてくれる。

 いろいろな居心地を大事にしようとすれば、同じフラットでも、凸型にして光や風の入り方や景色の見え方を変化させたり、凹型にして中庭の自然や向こう側の家族の気配が分かるようにしたり、という方がずっとニュアンスが膨らみます。またメゾネットのように、静穏な地下階とおおらかな地上階とを組み合わせたり、吹き抜けで緩やかに上下を一体化すると、居心地の良さのバリエーションが増えます。図面だけではなかなか読み取りにくかもしれませんが、住まいを選ぶならば、ひとりひとりの居心地の良さ、そのときどきの居心地の良さを大事にした、ニュアンスの豊かな空間にしたいものです。また、こうした空間であれば、ライフスタイルやライフステージが変わっても、模様替えやレイアウトを変更することで,また違う味わいを引き出せるので、結構対応しやすいと思います。

(ウ) 数値に表現されない魅力

名称:○○○世田谷梅丘 交通:小田急線/梅ヶ丘駅 徒歩8分 所在地:世田谷区梅丘2 総戸数100 価格7520万円・7690万円 専有面積・間取り74.97m2・80.03m2 2LDK・3LDK
 マンションを買おうとすると、ほとんどの人はインターネットや住宅情報誌から探し始めます。そこでまず目にするのが、こうしたスペック情報です。もちろん各社のホームページを閲覧すれば案内図や平面図、モデルルームに行けば基本仕様も分かります。もっとも、○LDKのプランばかりであれば各社大差なく、担当者ですら平面図だけではどこの物件か、どの会社の物件か、もなかなか分かりません。また大規模物件になるほど、周囲の環境とは別世界になるので、駅徒歩○分、生活施設○○以外は物件の検討項目から外れがちです。したがって買う側も、結局はスペック情報の比較に立ち戻ってしまいます。
 残念ながら、こうしたスペック情報からは、居心地の良さという情報はすっぽり抜け落ちてしまいます。モデルルームでも、ダイニングテーブルにフランス料理のカトラリーが並んでいたり、豪華なリビングセットやAVルームがあったり、とゴージャスな暮らしぶりで洗脳するかのようです。
 一方で、肩肘の張らない、身の丈にあった居心地の良さ、つまり「日が暮れる様子を眺めながら、ずっとボーっとしているのが安らぐ」「ほの暗くて静かな場所、そう、押入れのようなところで本を読むのが落ち着く」「子供が遊びに熱中したり寝息を立てたり、という気配を感じると、なんだか暖かい気持ちになる」といった説明文はまず見当たりません。もともとのプランが、そうした居心地の良さを捨象しているからでしょうか。
 居心地の良い住まいを探すのには、こうしたスペック情報に頼らず、自分なりの居心地の良さを図面や模型から汲み取る力が必要になってきます。

(エ) 建築家とともに創る楽しさ

 コーポラティブハウスの目的は、こうしたひとりひとりの居心地の良さ、そのときどきの居心地の良さを実現することです。
 そのために建築家が構想・計画する、大きめで、特色の異なる空間を組み合わせたニュアンス豊かな基本プランがあります。環境条件も丁寧に読み込まれます。周りの庭や樹木、ちょっとした隙間をも生かして開口部をとり、窓の外の景色や室内に差し込む光の加減時の移ろいを味わえるようにするでしょう。様々な方向に開口部をとるので、室内には光の綾や陽だまりができて、奥行きを感じます。のびやかな場所や密やかな場所、からっとした場所やしっとりした場所、などが有機的に組み合わされています。間と間は吹き抜けや階段などでゆるやかにつながり、お互いの気配も感じられます。建築家ならではの鮮やかな空間構成です。
 そして、ひとりひとりの居心地の良さを引き出すために、レイアウトやインテリアは建築家と相談しながら、テーラーメードで造られます。ちょうど、髪の毛を切るのにヘアスタイリストにお願いするように。

キッチン&ダイニングテーブル、リビング、テラスと一体に広がりがあるプラン。柱・梁のない構造が、内と外のテラスとを滑らかにつなぎ、壁面いっぱいの収納家具ですっきりと見せるという設計が、つながりのある暮らしを支える

 住む側は、自分なりの居心地の良さや気持ちのいい暮らし方について、率直にことばや写真などで伝えれば、建築家は無意識レベルの願望まで汲み取って、具体的なスケッチに落としていきます。「そう、自分が言いたかったのはまさにこういうプランだった」という声も良く伺います。そして建築家の頭の中の引き出しには、無数の部材や設備の情報があって、ひとりひとりの居心地の感じに応じて、基本プランの上にバランス良く的確に落とし込まれていきます。天井の白と壁の白の色味を変えると、より広がりを感じられます、といった設計の知恵も存分に発揮されます。こうした創造的なやりとりを繰り返し、立ち上がったときには、期待以上の住まいが出来るわけです。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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