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コーポラティブハウスの魅力
都市景観を語る言葉 (9)サクセスフル・エイジング
(株)アーキネット代表 織山 和久
都市景観を語る言葉、今回は、サクセスフル・エイジングをとり上げてみよう。
人については「年齢を重ねることは、美しさを積み重ねること。」と資生堂が主張している。
街にもサクセスフル・エイジング、そうした街の特徴を考えてみた。
人と交わる
四間道
300年以上もの歴史を誇る街並みが保存されている。
谷中銀座
スーパー進出、根津駅開業など危機を乗り越え、下町らしさを持ち味に発展してきた。
神田すずらん通り
古書店街が並ぶ。北側にお店、南側は天高のある搬入庫、という骨格が残る。
若男女を問わずに、温かく迎え入れる姿勢がある。シャッターを閉じて引きこもったりしないし、年寄り同士の付き合いに限ったりしない。付き合い方も変えられる。惣菜だけでなくTシャツや雑貨も扱う(谷中)。伝統の最中や羊羹も有名だが、カフェ、レストランも並ぶ(四間道)。共通の木製看板や軒先灯など工夫もする。ストリート全体でブックフェアを盛り上げて、漫画も取り上げる(神保町)。
筋を通す
でも街としての筋は変えない。低層の街並みはけっして崩さず、ほどよいスケール感を保つ。伝統的な木造建築や石畳などを維持するのは手がかかるけれど、自分たちの手で大事にする(四間道)。我先に、と中高層のアパートを建てて賃貸経営でラクしようとは思わない。安易にテナントにチェーン店を招こうともしない。人との付き合いが大事だから、車が入れなくてもいい。気骨あるね。
分を守る
街の規模は、外から訪れる人たちが歩いて回れる範囲にとどまる。神田すずらん通りで260m。谷中銀座商店街も170m、夕焼けだんだん坂から見渡せる範囲である。四間道も2.8haほどである。だから回遊性があるし、賑わいもあまり途絶えない。テーマパークなどが、人気を見込んでどんどん拡張するのとは対照的である。こうした分を守るというのも、年月を経て得た知恵なのだろう。
サクセスフル・エイジング。年月を経て魅力を重ねた街には、深い味わいがある。「人と交わる」、「筋を通す」、「分を守る」、というのは難しいけれど、大事なことだ。
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。