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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.74 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

都市景観を語る言葉 (5)水が合う

(株)アーキネット代表 織山 和久

 都市景観を語る言葉を充実させて、少しでもよい建築や街並みができるようにしたい。そこで前回までの「恥ずかしい」「和む」「盛りすぎ」「謙虚」に続き、今回は「水が合う」を選んでみた。

「この景観は、よく水が合うよ」

祇園白川疎水
水路の風情を暮らしに取り込む工夫が凝らされている

カナルカフェ
外堀に面したカフェ・レストラン

 連続する水辺は、都市景観の骨格である。水辺にはさまざまな動植物が集い、水を利用した人間の活動の歴史的な重なりも現れている。ロンドンとテムズ川、パリとセーヌ川、ニューヨークとハドソン川、シュツットガルトとライン川、上海と黄浦江、デリーとシャムナ川など、都市と河川は対になっている。
 京都もそんな街で、鴨川を中心に高瀬川や疎水などの水路も発達し、沿道の風景に潤いをもたらしてくれる。鴨川の土手は、散歩にもいいし、あちこちには若い男女がのんびりと腰かけて過ごしている。夏には納涼川床が有名だ。
 建物も、鴨川の眺めを楽しむように正面を据えて窓を開けている。祇園の白川疎水沿いには、京の町屋が水面と揃うように並び、水路の風や景色、水音を楽しむつくりになっている。南禅寺周辺では、敷地に水を引き込んで池を中心にした庭園が、日々の暮らしを豊かにしている。人々も、そんな水辺を大事にしている。
 もちろん東京でも、水辺を生かした場所がないわけではない。外堀の水辺を眺めてゆっくり食事や喫茶を楽しめるカナルカフェなどは、そんな例だ。下北沢界隈では、暗渠になっていた北沢川の上に通水して、緑道を整備している。子供たちが、木陰でザリガニ釣りとして遊ぶ姿も見られる。多摩川沿いのサイクリングロードも人気だ。

「水くさいなあ」

渋谷川
川底も岸もコンクリートに囲って人を寄せつけない。建物も背中を向けている。

神田川
上空を高速道路の高架が覆う。水路は嫌悪施設扱いである。

 しかし東京は水辺を嫌悪するように潰してきた。水面面積率では、1930年代の東京23区平均で15%程度あったが、現況では8%に減少している*1。高度成長期の急激な人口増加と市街地拡大に、下水道の整備が追い付かなかったことが原因である。そのため生活排水が大量に水路に垂れ流されて、浮きカスやメタンガスが沸くほどまで水質汚濁と悪臭が甚だしかった。神田川では、昭和40年代にBOD(75%値)が30mg/l程度、現在のあの汚染や悪臭で5mg/l程度*2というのだから、想像を絶する汚染状態が分かる。おかげで水辺の建物は、みんなお尻を向けて建つようになった。水辺を楽しむ都市風景や文化は。こうしてすっかり失われてしまった。
 東京都は当時、財政難等から下水道の整備も進まず、近隣住民からはひどい悪臭への苦情も寄せられる、という状況におかれていた。その解決策として、手っ取り早く水路に蓋をして、そのまま下水道代わりにしてしまった。20世紀初頭にあった河川の9割近くが、こうした廃止河川になった。渋谷川上流の河骨川は、「春の小川」にも歌われたのだが、これも暗渠になった。洪水の危険性がある水路では、蓋はしないものの三面張りのコンクリートで底から岸まで囲い込んで、自然の浄化作用も奪われた。川底の汚泥の浚渫工事を繰り返してしても、一向に悪臭は改善されない。東京五輪の前には河川の上には高架の高速道路が渡されて、水路はすっかり日陰者になってしまった。このように水路を塞がれることで川面を伝う風も遮られ、ヒートアイランド化にも拍車をかけている。
 ちなみに目黒川は沿道の桜並木で人気だが、一帯は旧式の合流式下水道のままだ。このため、大雨のときはオーバーフローを起こし、雨水と生活排水とが一緒になって護岸の雨水吐き口から目黒川に流れ込んでしまう。雨後には思わず鼻をつまむほどの悪臭が辺りを漂い、そのまま東京湾に流れ込んで赤潮等を発生させる原因にもなる。花見のときには、水再生センターの処理済み下水を目黒川に優先して流しているのだろうか。

 水が合う都市風景を取り戻し、人が心豊かに暮らすために、ちゃんと分離式下水道を整備する。暗渠を外して河川や水路を自然化する。もう車優先でもないのだから、ソウル市の清渓川復元事業のように高架の高速道路も撤去する。本来の都市基盤整備とは、こうした方向のはずだろう。水の恩はおくられぬ。

*1 環境省「平成14年度 ヒートアイランド現象による環境影響に関する調査 検討業務報告書 平成15年
http://www.env.go.jp/air/report/h15-02/01_1_2_2.pdf
*2 東京都「荒川水系神田川流域河川整備計画」平成22年 http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/kasenseibikeikaku/pdf/kandagawahonbun.pdf
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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