都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力
パブリックとプライベート (6)路地と住まいとのつながり
(株)アーキネット代表 織山 和久
路地を挟んだ分棟構成
大きな吹き抜けのあるリビング
路地空間を生かしたコーポラティブハウスにお住まいの方に、実際の暮らしの印象を伺ってみた。
空間の自由度
分棟形式をとって一住戸一棟になる構成であるため、上下の床の高さや位置なども暮らし方によって自由に設定できた。
具体的には、
- 12階の床を抜き、リビングに大きな吹き抜けをつくって、4室を一体にした。水廻り以外は区切らず、麻布一枚で分けている。
- 小さなお子さんがどこに居ても分かるように、間仕切りやドアを用いずに階層で分け、子供部屋の床を一部ガラスにして下から見上げるようにした。
- 天井高を十分にとって、愛用の家具がしっくり収まるようにした。一階に、遊びの空間や、車庫に充てていた場所をこもれる部屋に代えたりもした。
- 上下の階段に絡めて、壁に可変式の棚をしつらえて、趣味のある暮らしを楽しんでいる。3階は天高3mをとって、空間としても遊びがある。
トップライトを設けたダイニング・キッチン
一日過ごせるキッチンからダイニングを望む
壁付の可変式収納棚と階段
通風・採光
どの住戸も四面さらに上に開口を設けることが出来て、通風や採光には恵まれる。
- 開放感があって、外のようなうちがいい。
- 採光のため、全部の部屋にトップライトを設けた。
- 明るく見晴らしのいい場所に台所をつくり、台所でずっと過ごせるように、そこでいろいろなことが出来るようにした。
- 家中の窓を全開すると、すごく明るい。南向きの全面ガラスの風呂は、冬でも天気がいいと30℃で暖かい。
路地のある暮らし
路地で結婚披露パーティ
路地空間は、人と人とを自然に結びつける場になっている。
- ストリート(路地)は子供の遊び場になっている。子どもは向かいのお宅にドアが開いていると、どんどん入っていく。
- 入居者同士で会食する場にもなり、ある入居者の結婚式場にもなった。
- 路地を挟んで、お互いに借景を楽しむこともできる。手前の住戸の明かりは、他の住戸の方々が帰ってくるとき、みんな和む、癒される。吹き抜けに置かれた高さ2mもの植物は、向かいにお住まいの方の目を潤している。
このように、路地を生かした建築空間が自然に小さなコミュニティを育みながら、人々の暮らしを心豊かにしていくことが実感された。この豊かさは、戸建てや分譲マンションなど他の形式ではなかなか実現されないことかもしれない。
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。