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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.63 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

大規模マンションの社会的費用 (5)不都合な真実

(株)アーキネット代表 織山 和久

 タワーマンションがスラム化するリスクに関して、関係者に伺ったことがある。大手ディベロッパー担当者は「当然、分かっている。でも問題になる頃には、自分たちは会社にいないから」、某大手新聞記者は「スポンサーの意向があるので、正直、ネガティブな記事は書きにくい」、といった返事であった。東日本大震災のときに豊洲や有明でも液状化現象が発生したが、報道したのは赤旗ぐらいだった。不都合な真実なのである。
 ディベロッパーにとっては、タワーマンションの収益性は高い。分譲価格に占める原価(土地代+工事費)の割合は、通常のマンションでは65-70%ほどだが、タワーマンションでは45%にもなるという。臨海部の工場跡地等の用地所有者にも、その分、ディベロッパーが割高に土地を買い取ってくれるから有難い。2000年前後には政府の都市再生を名目に、容積率の緩和、高さ規制や日影・斜線規制の適用除外など一連の優遇策を施行した。規制緩和で建築可能な建物の床面積が倍になれば、土地価格はほぼ倍になるのだから数百から数兆円規模の大土地所有企業には有難い政策である。マンション購入希望者も「眺望がいい」「防犯面で安心」「駅から近い」といった理由で、相当数がタワーマンションを選ぶ。

 こうした背景から、タワーマンションは2000年ごろから乱立し、まもなく累計で900棟、30万戸にも達する勢いである*1。居住人口にして100万人近い規模にまでになる。
 タワーマンションが生じさせる社会的費用は、もっぱら周辺住民が負担している。その額は、タワーマンションの一戸当たりざっと2,000万円ほど、内訳は、スラム化による解体費分300万円、火災旋風被害320万円、ヒートアイランド被害分600万円、景観破壊分560万円。さらに局所豪雨対策(都は貯水池に540億円投じ、さらに40年間も毎年250億円投じる必要があると主張している)、エアコン等による温暖化費用と嵩む。タワーマンションの価格が購入予定者の予算に合うのは、一戸当たり2,000万円もの社会的費用を用地提供者、事業者、所有者が負担せずに済んでいる(あるいは、周辺住民に押し付けている)からだとも考えられる。
 タワーマンションの急増とともに、こうした社会的費用も肥大化する。例えば、大地震が発生し、運よく建物は損壊を免れたと想定しよう。けれども上水道の断水率は、江東区76.5%、中央区68.5%、港区44.5%と予想される*2。タワーマンションの多い区である。昇降が大変なので給水車からとても水を運べない。したがって数十万人規模の避難民が出るが、これほどの人数を受け入れる公共施設等は用意できるものではない。将来のスラム化の費用も同様で、解体費用だけで一棟当たり10億円超かかるとなると、全体で900棟として1兆円規模になる。廃墟のまま放置すれば都市景観を破壊し犯罪の温床になるから、といって自治体がこれだけの財政負担に応じられるのだろうか? ツケは誰が負担するのだろうか? このようにタワーマンションの数が増し、火災旋風、ヒートアイランド、景観破壊、局所豪雨、温暖化ガスなどの問題も深刻になり、社会的費用も200兆円もの巨額に達している。タワーマンションは、地震帯でかつモンスーン気候の密集市街地には適さないのだ。

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 不都合な真実は、もう隠してはならない。未来を損なわないために、タワーマンション乱立による社会的費用の増大に一刻も早く歯止めをかける必要がある。これ以上の新築を防ぐなら、1919~1970年の50年間運用された絶対高さ規制の上限31mを復活させることだ。既存のタワーマンションの社会的費用については、一戸当たり2,000万円として毎年70万円弱(35年、利子率1%の仮定)相当を自治体が固定資産税等で徴収し、将来の解体費用の積立、密集市街地の緑化や不燃化等に充当して、周辺環境の改善に還元する方法が公平で妥当な線だろう。タワーマンションはもう終わりにしよう。

*1 不動産経済研究所「超高層マンション市場動向 2013
*2 東京都「首都直下地震等による東京の被害想定」2012
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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