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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.40 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

場の理論(2)
街との関わり

(株)アーキネット代表 織山 和久

郊外のマンション、街なかのコーポラティブ

 右図の赤丸は2011年7月末に販売中の新築マンションの場所、青丸はアーキネットで竣工したコーポラティブハウスの場所を表しています。
マンションは郊外に多く位置し、コーポラティブハウスは都心部に集中していることが一目瞭然です。このように分譲マンションが郊外に立地する背景には、やはりマンション分譲の規模の経済性が働いています。
 分譲マンションでは用地を先行して仕入れて、設計作業も進めます。モデルルームや広告・宣伝、営業マンといったように、固定的な営業費用をかけることになります。こうした費用を効率良く投資回収するためには、最低でも50戸、用地も1,000m2以上の規模が求められ、土地が細分化されている都心ではなく、郊外で計画することになります。
 対照的にコーポラティブハウスでは、予め入居予定者が集まってから事業が始まります。売れ残りがない分、余計な営業費用もかからないため、比較的少戸数でも成立します。そのためにコーポラティブハウスは都心部に多く立地できるわけです。

 郊外に行くほど、農地も入り交じって人口密度も建物密度も薄いエリアになるので、店舗や施設もまばらになります。マンションの周辺情報でも、例えば「総戸数270戸、駅徒歩7分。公園1分、緑豊かな子育て環境。大型ショッピングモールまで徒歩3分! ○○幼稚園(約960m・徒歩12分)、○○病院(約790m・徒歩10分)、○○郵便局(約600m・徒歩8分)、セブンイレブン○○店(約450m・徒歩6分)等」と生活施設はまばらに点在しています。要するに、街としての発展はまだまだ、このマンションに大勢の入居してどうか、という発達度合いです。そして大規模マンションになると、豪華客船のように棟内にスーパーマケットやスポーツジム、ラウンジなど共用施設を売りにしており、土地から切り離されて自己完結しているという意味で客船と通じるところがあります。

暮らし方と街との相性をみる

 都市部のコーポラティブハウスとなると、立地条件もポツンとした郊外ではなく、若者で賑わう商店街、年輪を感じる住宅街など一帯の街もそれぞれ発達しています。したがって、自分たちの暮らし方と街の性格との兼ね合いが決定的に重要になります。こうした街の性格を定量的に知るのには、街の年齢別人口構成とその推移を調べるのが有効です。具体的にいくつかの街の例をとってみましょう。

 最初は、北区桐ケ丘1−2丁目です。右図のように、70歳代をピークに大きな山があって、子どもや現役世代が少ないことがすぐ見て取れます。5年前と比較すると、子どもや現役世代が街を離れて、新たに人口流入のないまま山が右に動く、つまり高齢化だけが着々と進行する様子がよく分かります。このような高齢化の街に住居費が割安だからといって、子育て世代が暮らすのはなかなか厳しいものがあります。

 次の例は、吉祥寺本町1−4丁目です。住みたい街ランキングトップの街だけに、25〜29歳の層に山があってさほど動きません。それでいて、5年後もどの年齢層も多少の出入りがあるにしても、その層の人口はほぼ変わらずに住み続けている、といった傾向が見受けられます。たえず若年層を集め、しかも定住していくという街の魅力を備えていることが伺えます。ちょっと街に散歩に出ると、若い世代などで賑わっていて活気がある、どの年代層にもお気に入りの店や場所がみつかる、といった特長です。徐々に家賃や土地代が上がっていくのが懸念でしょうか

 3つ目の例は、成城4丁目です。40〜55歳の働き盛りの年齢層になだらかな山ができています。さらに5年の間に40歳代で計55人もの純増で、こうした層の根強い人気が伺えます。実際に、生垣や植栽に囲まれた邸宅が整然と建ち並び、和食や洋菓子、趣味の名店も続く、と落ち着いた大人の雰囲気で、終の棲家を求める層にはぴったりの街の様子です。ただ、持家や分譲マンションとなると億単位にもなり、なかなか若年層には敷居が高いかもしれません。
 このように市街地になると、道一本違うだけでも雰囲気が変わるように、街それぞれの個性が際立ってきます。

成城の街並み。植栽に囲まれた邸宅が整然と建ち並ぶ

 前述の分譲マンション広告のようでは、こうした街の特徴を浮き上がらせることはできません。東京都区部でもこうした町丁数は3,137に上りますが、それだけ多様な街の中から自分たちの暮らしに合った街を選ぶことができることになります。

街にふさわしいプランに

 街の特徴に応じて、本来ならば住まいのプランニングも対応していきます。しかし分譲マンションでは年間数十棟・数千戸もの「量産」に対応するために、住戸のプランニングも「南向き、○LDK」に規格化されています。営業サイドからも、明快な特徴のあるプランはかえって敬遠されます。したがって街に応じたプランニングを考えるにしても、○LDKの規格商品の範囲内で、ファミリー向けかシングル向けか、エグゼクティブかエコノミーか、と区別も大括りです。後は、階数、主要開口部の向き、角住戸/中住戸といった要素で、分譲価格に色をつけることでしょうか。
 対照的にコーポラティブハウスでは、敷地も100坪前後で戸数も10戸以下という規模で、土地の形状や建築条件に左右されますので、規格化しようもありません。従って、街の特徴にあったプランニングを毎回工夫するのが当たり前になります。

吉祥寺のコーポラティブハウス。外に開いたつくり

 例えば、吉祥寺のように活気のある街は、夜遅くでも外食できるので共働きにも向きます。ふだんの日中は家に居ないので南向きにもこだわらずに地階も好まれるので、積極的に地下空間も生かします。休日も家の中にこもりきりというより、気分や天気が良ければちょいちょい街中に歩く暮らしなので、外に開いたつくりが好まれます。

成城のコーポラティブハウス。街並みに合う落ち着いた外装材を生かす。中庭からのアプローチを経て各住戸の玄関に至る。

 成城では、大人の街の雰囲気に合わせて外装材も落ち着いた素材を生かします。各住戸のプランニングも、働き盛りのご家族それぞれが居場所をつくれるようにメゾネットで構成されます。そして外から帰るときに素の自分に戻ってほっとできるように、と中庭からのアプローチもその距離感から体の向きまで工夫されています。

 郊外のポツンとした場所に建つ分譲マンションならいざしらず、暮らし方と街との相性はよくよく大事にしたいものです。東京都区部でみても数千もの街があるわけですから、街の選び甲斐もあります。コーポラティブハウスでは10戸前後でも成立する特性を生かして、こうした街に立地することができます。そして設計も毎回テーラーメードですので、その街に似合う暮らし方を生かしたプランニングになります。自分たちの暮らし方に合った街を選ぶ、街と暮らし方に住まいをつくる、というのを大事にしたいものです。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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